「ねぇねぇ昨日ちゃんと見た!?」
「もち見たよ!やばいかっこよかった…!」


朝っぱらから大声を出してかなりミーハーな声を上げている話題は何なのかというと
どうやら昨日やっていた総合格闘技の話らしい。試合中継の次の日はかなりの確率で
どこかしらの話題になる。それは必ずしも男子ではなく、中学生ともなると
寧ろ女子のほうが多かったりする。ここ立海大付属中学でも例外でなく、
ある教室の片隅で目の前の彼氏を放ったらかしにして女子が早速大声で話しているのだった。


「あのローキックが後で効いてきたんだよね!」
「うんうん、やっぱキックボクシングの時代なんだよ!」


机をばんばんと叩きながら興奮しきった状態で選手の名前を言いながら「最高ー!」などと
叫んでいる。まぁホームルーム前とあって教室は騒がしいので、もう少し踏み込めば
宗教じみた何かになりそうな二人のこともそこまで気にならなかった。
ちょうどその時担任が教室に入ってきたので今まで話していた友人は自分の席へとついた。


彼女らの前に座っていた切原赤也は雨の日というせいもあってかなり機嫌が悪かった。
晴れの日だから今日は髪の毛が真っ直ぐストレートなの、という次元ではないが
天然パーマに湿気は更に拍車掛かって、もうやりたい放題な方向にうねるのだ。
そんなわけで生粋の天然パーマくん、切原は例のごとく普段より一層はねが激しい髪
なので不機嫌なのも頷ける。髪を気にして懸命に手で押さえつけている。
見ている側としてはそんな気にしなくても一緒じゃないの、と言いたくなってしまうのだが
そんなこと言うと切原の無駄な努力が本当に無駄になってしまいそうなので言わないでおく。


だけれど、切原の機嫌が頗る悪いのはそれだけではなかった。


「あーもー!お前朝からうるせーんだよ!」


切原は今までの不満を一気にぶちまけるようにして叫びだした。
突然言い出した切原に彼女はびくりとする。


「そんなに昨日の試合は良くなかったと思うぜ?相手が弱かっただけだろ」


明らかに八つ当たりをしているとしか思えない切原に対して彼女は逆ギレをする。


「何それー!悪く言わないでくれない?」
「八百長は金がありゃいくらでもできんだよ」
「ちょっと赤也!それは言い過ぎじゃないの?ファンとしてすっごく傷つくんだけど」
「そんなん知るかよ!俺だってなぁ!」
「何よ!」


切原の機嫌が悪いのは格闘技の話をしていた女が自分の彼女だったからだ。


「お前が俺の目の前で別の男の話なんかしてたら機嫌悪くなるに決まってんだろーが!」










---------------------------------------

06/09/28〜08/09/24
二代目拍手Bです。ちなみに自分はミーハー嫌いです(笑)