「ねぇ何で?」

そう言い出して来たのは突然だった。
いつものように部活が終わって、いつものように駅までの道のりを歩きながらいつものように
くだらないことから話しをする。
だけれど、その一言で「いつもの」が今日は少しだけ違った。

下から見上げるように話す彼女からは瞬きをする度長い睫毛が動く。
俺はその「何で」がわからなくて見上げられた目を逸らして少しだけ考える。

だけれど思い当たる節が全く見当たらなくて、ついには見上げた先の紺碧の空に浮かんでいた雲の
形に妙にひきつけられて数秒見つめていた。違うと思って話題を頭の中で整理をしたら
なんの話をしていたのかはっきり思い出せなくなっていつのまにか降参していた。


「何って、何が」
「何ってさぁ、英二、言われてわからないの?それとも何?無意識ってわけ?」


俺はますますわからなくなる。やっと記憶が追いついてきて道筋が立ったけれど、
やはり何の前触れもなく彼女は聞いてきていた。
言葉に詰まって黙っていると彼女は眉間を寄せて再び見上げてきた


「あのさぁ、付き合って何ヶ月になると思ってんの?」


何かの記念日でも忘れていたかと付き合い始めた頃からを数えていたが
そういう問題じゃないとでも言いたげに溜息を漏らす。彼女はそのまま言葉を続けた。


「教室とか、周りに人がいるときにだけあたしにくっついてきたりするくせにさ」


飲み干していた缶ジュースをちょうど自販機の隣にあったゴミバコに投げ入れると
思い出したように少しだけぴくりと肩が反応した。彼女は呆れたように横目で俺を見る。


「二人でいるときにキスどころか手も繋いでくれないってどういうことよ。」
「…あーその話…」
「あたしさぁ、結構そういうの不安になるんだよ。そんなに魅力ない?それとももう飽きた?」
「それはない。絶対」
「じゃあ何?なんか遠慮してるの?」
「それとも違う、かな」
「はっきり、言ってよ。あたしが何か悪いなら直すから」
「そういう問題でもないんだよ。…男の事情?みたいなの」
「…なにそれ」
「けど、ちゃんと好きだから、そこは安心してて」


彼女は半信半疑に俺を見たが「まぁ好きならいいや」と口元を少し緩めて言った。
反対側のホームへ向かう彼女を見送りながら俺は高鳴る鼓動をなんとか抑えて
逆にほっと一安心した。


(逆に可愛すぎていまだに緊張すんだって)









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06/09/28〜08/09/24
二代目拍手Aです。純情少年好きは二年経っても未だ変わらず(笑)