4月に入り、暦上は春であるはずだ。しかしどうだろう。三寒四温というはずなのに寒さばかり続いている気がする。
気温は確かに高くなっているが今日のこの肌寒さは冬をそのまま受け継いだようだ。
上を見上げれば曇天が広がっていて気分は、良くはならない。今にも降り出しそうな天気に顰め面をしていると
なんとなく泣きそうになった。…本気で泣きはしないけど。
おかしいのは自分じゃない。自分は普通だ。自分は。そう言い聞かせながらも、ふと思う。
最もそんなことを考えてる自分はおかしい。
中学、高校と全国大会に必死になったテニスも今じゃサークル程度で、どっと気が抜けた。
それはそれで楽しい。だけれど過去のような輝きは一つもない。
普段吸いもしない煙草を吹かす。ふーっと吐き出してみるが、大量に吸い込んだ毒物は気持ちいいもんじゃない。
テニスを真面目にやってればこんな風に腐ったりはしなかったのだろうか。
そう思っていたのは一年のときで、今はこんな選択もありだ、と開き直った。
だけれど何もかも上手くいかなくなったのは、その時からだったに違いない。
白い煙は風に乗っかって流され消えて行く。
* * *
「ブン太は、付属には行かないんだよね。」
高校最後の文化祭のあとだった。クラス皆で行くはずの打ち上げも行かずに俺の家にを連れ込んだ。
事をやり終えたは、ブラジャーのホックに手を回しながら俯き気味に突然言い出した。
引退してからすぐ決めたことで、とっくにには報告していたので何を今更、と思いながらベッドに横たわっていた。
はこちらを見ようとしない。
「私たち、高校で終わりにしよう。」
「…は?」
「このままいけば結婚できるかなって考えてたけど、これは無理だよ。」
は少しだけ寂しそうに笑う。それがなんとも愛おしいような、しかし悔しさでもあった。
これも何を今更、と思うしかなく納得がいかない。何度か気持ちのすれ違いとかあったけれどどうにか乗り越えてきたし
への気持ちは、最初の頃と変わらない。それなのに。
「お前、今更俺に飽きた?」
「…違うよ。」
「じゃあ何だよ!何が不満なんだよ!」
「理由は…ブン太が一番、わかってるはずだよ。…ゴメン、今日は帰るね。」
見慣れた背中を、出て行くことを見ているしかなかった。
* * *
「どうしてそうなった?」と聞かれれば、「時の流れだから。」と答えるしかない自分はどうしようもなくて情けない。
思い出した影にイラついて左手で壁をど突く。それもなんだか情けなくて自分に嘲笑う。
もう一度煙を肺に入れる。上を向いて吐き出す。白い煙は別の方向へ流される。
一度折れたものを立て直すには難しくて、そのまま放置しておくしかない。それしか考えられない。
あれから4年以上経つ。そのはずなのに俺にとっての4年間はすっぽり抜けていて、何も思い出せない。
あの記憶だけ置き去りにされたまま。
あんなの忘れようといろんな女を抱いてみたのに
意味がないそれは脆くも消えただけで、取り残された自分を汚しただけだった。
ただ、何度も何度も俺に囁くんだ。
記憶の中の君が
06/0502