「近くで見ると、可愛ええのぅ。」


気配も無く、そいつは突然私の目の前に現れる。
男に対する免疫を蚊の血ほども持っていない私は、今数十メートル後ろにバックダッシュしたい気分だ。
警戒心を全身に纏わせ、目と手に力をこめる。あ、因みに魔法界からやってきた少女じゃないですよ。
力こめたって何もでませんよ。とりあえずの構えてみただけです。気は持ちようっていうからね!
脳内ヘヴンはいいとして、私は目の前の現実にとりあえずつっこんでみる。


「い、いきなりなんですか。」
「そのままの意味。」
「え?あ…うん…?……ていうかこれは一クラスメイト同士の男女の距離じゃなあぁい!」

私は私の目の前で微笑む仁王君に早くも理性をなくし机を思いっきり腕で突き放した。
今の台詞を噛まずに言えたことは自分でもかなりびっくりだ。物凄い調子で心臓が脈を打っている。

「騒がしいのぅ。俺なんもしとらんじゃろ。」
「う…う、うるさい!どうしてそゆこと、言うかな!と、特に最近!」

私は恥ずかしいほど動揺しまくりでうまく呂律もまわらないという緊急事態。
思考回路はだんだんと機能しなくなってきて、このまま行けばオーバーヒートするか停電するかのどちらかだ。
最近仁王君はやけに私に絡んでくる。
小さい頃から一緒だったっていう幼馴染でもなし、特に仲が良いわけでもなし、ましてや今年初めて
同じクラスになったばかりで喋ったことすらない。それなのに、いきなりなんなんだろう。
私なんか悪い事したっけ?いやいやしてないよ、私は何も悪くないって。 悲しくつまらない女達が集まるのが
定番だったくせに現在何故か私の周りは疎遠されて、なんか友達減った気分だし。
この男のせいだ。よくわからないうちから私に絡んできて、一体なんのつもりなのよ。
これだから男とは関わりたくないのに。
私は男と遊んでちやほやされるような性分じゃないはずなんですけれども。


私がショート寸前の頭でいろいろと考えていると仁王君は少し噴き出してから小さく笑い始めた。
え、何、どこにも笑う場面なんてなかったじゃない!もしかして私って無意識のうちに
お笑いの才能開花させてた?
…いや、それは冗談だけれども。


「おもしろいのぅ。」


あ、やっぱりそうでした?
じゃないって私!何考えてるんだ!…どうやら私の頭は停電するよりオーバーヒートを選んだらしい。
停電してくれたほうがまだよかった気がする。
「な、何が面白いのよ。」

普通の男子でさえどう接していいかわからない私なのに、この男ときたら更に扱いにくい。
いつも何を返しても、うまく返されてしまう気がして最近ではもう防戦一方というか
防ぐことさえ危うくなってきた。まぁ危うくなってきたといっても何が起こるわけでもないんだけど。
この男は何がしたいんだろう。私にどうして欲しいの?


「今、何考えとる?」
「は…?な、何って」
「俺のことで頭がいっぱい?」
「なっ!…そんなこと」


私は身を乗り出して精一杯反抗した。つもりだった。だけれどもその後の言葉が紡ぎ出せない。
あーもーなんなの?私の頭は私の味方をしてくれないの?反抗期か貴様!



「そんなこと?続きは?」



キーンコーンカーンコーン



マジでホントにちょうどいいところでチャイムが鳴ってくれた。
ていうか味方してくれるのは友達でもなく、自身の頭でもなく、チャイムだけっていうのは
なんか気に障るんだけれど。


「はい。チャイム着席!は、早く席戻りなよ。」

チャイム着席などする生徒はいるわけないのに、私は急いで仁王君を追い返した。
窓に映った私の顔は心なしか頬が紅潮していた。やり込められた感じで少しゾクッとしたが
今までと違って何故か悪い気はしなかった。
私の心臓は、さっきと違う脈の打ち方をしていた。全身で脈を打つというより、心の中心で。





「もうちょい、かのぉ。」








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06/04/05〜06/09/28 
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